近藤真宣 ゼミ
日本語から知る現代日本社会
ゼミナールの目的・内容
街中にはさまざまにメッセージを発する文字や絵文字があふれ、それらが「言語景観」を構成しています。言語景観からは様々なことを読み取ることができます。人の視線を知らず知らず引き寄せる力を持つ言語景観には、文字や記号、図柄による視覚印象、声に出した時の印象を活かす工夫やことばの選び方の巧みさが見られます。また、場所、設置した人、見る人といった要素が重なり合う中で、ことばの背後に隠れた意味や意図が浮かび上がることもあります。日本語だけでなく、英語や中国語、韓国語などで多言語化された案内や看板、ポスターを見ると、現代日本には多くの外国人がいるのだなと実感できます。近藤ゼミナールでは、この言語景観に着目し、そこから現代の日本社会と日本語について考えていきます。また、いずれ可能となれば、海外で収集した言語景観との比較も行っていきたいです。
ゼミ学生のコメント(授業後振り返りシートでの抜粋)
中国人留学生・Rさん
言語景観の知識に触れるようになってから、道路の看板やポスターなどが気になるようになりました。電車内に貼られている広告は、さまざまな字体を使い、乗客の目を引き、色を鮮やかにしていて、面白いと思います。そして、コンビニのポスターや看板に複数の言語による説明が併記されていることにも目が向くようになりました。日本人学生・T
君看板の漢字をあえて平仮名にしたりカタカナにしたりすることにも意味があるというのは、自分でも行うことがあるため実感がありましたが、フォントで雰囲気を変えられるのは気づいてみるとその通りで、フォントが変わることで読んでほしい対象者への印象付けも変わるのはとても面白いと思いました。日本人学生・A君
課題で実際にゼミ紹介のポスターを作ってみて、フォント選びの難しさやポスターに相応しい色を選ぶことの難しさなどが分かりました。ふだん街中や電車の中で何気なく見かける言語景観には多くの労力がかけられているであろうことを実感しました。これからは看板1つ見るときもなぜひらがなが使われているのか、なぜこの字体を使用しているのかなどを考えてみたいと思いました。日本人学生・Kさん
ピクトグラムの意味が、背景文化を知っている人にこそ分かるものであった場合、それを知らない人に伝えるにはどのようにすればいいのか考えさせられた。また、女性は赤、男性は青というトイレの色分けを、ジェンダー問題への配慮からなくす試みが紹介されたが、男女の別が分かりにくくなってしまうこともあり、いくつかの要素のバランスのとり方が興味深く感じた。まだ3年ゼミもはじまって間もない5月中旬ですが、ゼミ生は調査、発表、検討の中で、これまで何気なく見ていた言語景観を意識的に観察する面白さに気づきはじめているようです。今後観察と分析をいっそう深化させることで現代日本についての理解を深めてもらいたいです。
(近藤 2022年現在)