FACULTY OF FOREIGN LANGUAGES
外国語学部NEWS

【長期研修レポート】メキシコ留学経験について

2026.03.17(火)
スペイン語学科  
メキシコ国立自治大学長期研修 山本 虎南さん(スペイン語学科3年/東京都・松陰高等学校出身)本レポートでは、私がメキシコ留学中にタスコとメキシコシティという二つの異なる街で生活した
メキシコ国立自治大学長期研修

山本 虎南さん(スペイン語学科3年/東京都・松陰高等学校出身)


本レポートでは、私がメキシコ留学中にタスコとメキシコシティという二つの異なる街で生活した経験を通して得た体験と、そこから学んだことについて述べる。山間の歴史都市であるタスコと、首都として政治・経済・文化の中心を担うメキシコシティでは、街の雰囲気や人々の生活様式が大きく異なっており、それぞれの都市での生活は私に異なる気づきを与えた。本レポートでは、両都市での生活体験を比較しながら、留学を通して得た学びや成長について考察する。

まず、留学生活の初期に滞在したタスコでの生活について述べる。タスコはメキシコ南部の山間部に位置する歴史都市であり、銀の産地として知られている。街全体は観光地として整備されているものの、都市規模は比較的小さく、落ち着いた雰囲気が特徴的であった。赤い瓦屋根と白い建物が連なる街並みには統一感があり、歴史的景観が日常生活の中に自然に溶け込んでいる点が印象的であった。
街には石畳の道や急な坂道が多く、徒歩での移動には体力を要した。特に雨天時には路面が滑りやすくなり、移動の困難さを実感する場面も少なくなかった。しかし、そのような地形的特徴によって近代的な開発が抑えられ、街の歴史的景観が良好に保たれているとも感じられた。日々の移動を通して、観光地としての側面だけでなく、タスコの日常的な暮らしの一端を体感することができた。

生活面では、夜になると街全体が静まり返り、昼間の観光客で賑わう雰囲気とは一変して、穏やかで落ち着いた空間が広がっていた。
20260317_gozawa.k_01タスコの景色
夕方頃になると、大人たちがソカロ前の広場や公園に自然と集まり、談笑しながら時間を過ごしている姿が見られた。
このような光景は日本ではあまり見られず、地域社会における人々とのつながりの深さを強く感じさせるものであった。
また、日常的に利用していた店や市場では、何度も通ううちに店員に顔を覚えてもらい、気さくに声をかけてもらうことも多かった。住民同士の距離が近く、人と人との関係が生活の中に自然に溶け込んでいる環境であった。この街での生活を通して、都市の利便性とは異なる、地域社会に根ざした暮らしの豊かさを実感した。
20260317_gozawa.k_02タスコのソカロ広場
これに対して、次に滞在したメキシコシティでの生活は、タスコとは大きく異なるものであった。メキシコシティは政治・経済・文化の中心として発展してきた大都市であり、街全体に活気と緊張感が漂っていた。高層ビルや幹線道路が数多く見られ、その都市規模の大きさに強い印象を受けた。

生活の利便性という点では、メキシコシティは非常に充実していた。公共交通機関が発達しており、地下鉄やバスは約6ペソ(約54円、2026年3月現在)という低価格で利用でき、市内の移動は比較的容易であった。また、商業施設に加え、タコス屋やカフェなどの飲食店も数多く存在し、生活に必要なものがすぐに手に入る環境は、大都市ならではの魅力であると感じた。一方で、デモが頻繁に行われるため、公共交通機関が一時的に利用できなくなることもあり、計画通りに行動できない場面もあった。このような経験から、都市部で生活するうえでは、状況に応じて柔軟に対応する力が求められると感じた。

20260317_gozawa.k_03デモで駅が封鎖されている様子
20260317_gozawa.k_04ソチミルコ湖
また、CEPE(メキシコ国立自治大学付属の語学学校)での生活においても、メキシコシティならではの特徴が見られた。学生数が多く、アジアやヨーロッパ、アメリカなど多様な背景を持つ学生と接する機会があり、授業内外を通してさまざまな価値観に触れることができた。特に、アメリカ人学生は自分の意見を的確に言語化し、積極的に主張して他者と共有する力に長けており、その姿勢から、自己の考えを明確に表現することの重要性を強く意識するようになった。

さらに、都市部での生活を通して、人との関わり方の違いも実感した。タスコでは地域全体で人々がつながっている感覚が強かったのに対し、メキシコシティでは人間関係がより個人単位で完結している印象を受けた。しかしその分、自ら行動しなければ人とのつながりが生まれにくく、積極的にコミュニケーションを取る姿勢の重要性を学ぶことができた。

以上のように、タスコとメキシコシティという性格の異なる二つの都市で生活した経験を通して、同じ国であっても都市の規模や役割によって人々の生活様式や価値観が大きく異なることを実感した。タスコでは地域社会に根ざした人間関係の温かさや、落ち着いた生活の豊かさを学び、メキシコシティでは多様な人々と関わる中で、自ら積極的に行動し、考えを発信する姿勢の重要性を学んだ。

最後に、日本での生活と比較すると、メキシコでの生活は人との距離の近さが特に印象的であった。日本では、都市部を中心に個人のプライバシーや効率性が重視され、隣人との関わりが限定的になることも多い。一方、タスコでは地域社会の結びつきが強く、日常生活の中で自然と人との交流が生まれていた。また、メキシコシティにおいても、人々が自分の意見をはっきりと表現し、他者と積極的に関わろうとする姿勢が見られ、日本とは異なるコミュニケーションの在り方を実感した。

これらの違いを体験したことで、日本社会の良さを再認識すると同時に、自身がこれまで無意識のうちに控えめな姿勢を取っていたことにも気づかされた。メキシコでの留学生活を通して学んだ、主体的に行動し、自分の考えを言葉にして伝える姿勢は、今後日本で生活する上でも大切にしていきたいと考えている。