FACULTY OF FOREIGN LANGUAGES
外国語学部NEWS

【連載】Amor Español~教員対談企画⑤~

2024.02.27(火)
スペイン語学科  
メキシコ人から見た日本、そして八王子日本在住10年目、メキシコ人の精神科医で八王子に暮らすソニアさんと、メキシコ滞在歴8年でメキシコ大好きな郷澤圭介准教授が、日本とメキシコの社会と
メキシコ人から見た日本、そして八王子

日本在住10年目、メキシコ人の精神科医で八王子に暮らすソニアさんと、メキシコ滞在歴8年でメキシコ大好きな郷澤圭介准教授が、日本とメキシコの社会と文化の違いについて語ります。
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郷澤:日本に来るきっかけは?

ソニア:日本人である夫と結婚したことです。今、目の前にいますが(笑)

郷澤:日本について初めて知ったのは何歳のときですか?
ソニア:私が6歳のときです。テレビで放映していた『マジンガーZ』や『キャンディキャンディ』を見て、日本のアニメだと知ったときから憧れていました。メキシコでは日本のアニメは大人気で、『ドラゴンボールZ』『ナルト』などの少し古い作品から最新のアニメまで今もテレビで流れています。

■通り、野良犬、ゴミ
郷澤:日本にやってきて驚いたことは?
 
ソニア:まずは道がいつもきれいでゴミが落ちていないことですね。
 
郷澤:メキシコでは毎日早朝に清掃員が通りをほうきで掃いて大量のゴミを片付けますよね。でも夜にはまたゴミだらけになる。
 
ソニア:その通りです。日本ではみんなゴミを家に持ち帰って捨てていて、道ばたにポイ捨てする人を見たことがありません。野良犬がいないことにも驚きました。
 
郷澤:放し飼いの犬もいて、いきなり噛みついてくるから怖いですよね。他には?
 
ソニア:モラルの面で言うと、ゴミの分別とリサイクルの習慣ですね。メキシコではまだまだです。分別を心がける人もいますが、結局作業員が収集車の上で袋を全部破って、売れそうなもの、自分が使えそうなものを取った後にまたごちゃまぜにしてしまうので、家庭で分別する意味がありません。日本にはリサイクルショップがありますが、メキシコにはまだない。だから、使えるものでも不要になったらゴミとして捨ててしまうのです。
 
■寛大で忍耐強い日本人
郷澤:日本社会のいいところは何だと思いますか?
 
ソニア:寛大さ、忍耐強さです。日本の伝統や習慣を知らない私たちにも、日本人は丁寧に辛抱強く説明してくれます。役所の手続きにしても、親切にさまざまなオプションを提示してくれて、効率的に早く終えるよう、時間を無駄にしないよう手助けしてくれます。メキシコでは、とくに役所ではそんなことはほとんどしてくれません。逆に細かいミスを指摘され、何度も出直し、再提出させられます。
 
郷澤:日本人は忍耐強いということですが、ちょっと忍耐強すぎる、働きすぎると思いませんか?
 
ソニア:はい。事実、日本社会とメキシコ社会は両極端だと思います。日本人は働きすぎで家族との時間をあまり大事にしない。反対にメキシコ人はフィエスタや自分が楽しむことばかり考えています。もちろん全員がそうではありませんが、多くのメキシコ人は仕事に対して無責任で、いい仕事をしよう、効率的に働こうという概念がない。職場でもすぐにキレる。
 
郷澤:じゃあ理想的な国は両者の中間にある、ということですね。
 
ソニア:その通りです。
 
郷澤:ハワイあたりにありそう(笑)
 
ソニア:そういうことじゃないのよ(笑) 地理的なことじゃなくて。態度、振舞いという意味で。
 
郷澤:メキシコ人と日本人、お互いにいいところを学び合うことが必要ですね。
 
ソニア:そういうことです。
 
■家族とコミュニケーションが命のメキシコ人
郷澤: 日本社会とメキシコ社会は両極端という話が出ましたが、ではメキシコ社会のいいところは何でしょう?
 
ソニア:家族を大切にすることです。どんなときでも家族が一番、仕事は二の次です。「死者の日」やクリスマス、カトリックの洗礼の儀式や結婚式、「キンセアニョス(娘の15歳の誕生日を祝う祝儀)」では、どんなに離れて住んでいてもかならず家族全員で集まります。
 
郷澤:よくわかります。僕もメキシコ人のそこをリスペクトしています。他には?
 
ソニア:とても重要だと思うのは、誰とでもごく自然に、気軽にコミュニケーションがとれることです。家族やお隣さん、友人、職場の同僚、クラスメートたちと、当たり障りのないテーマを話すだけでなく、プライベートなことや心の病に関しても相談します。電車やバスでたまたま隣に座った人にも。これは私が好きなメキシコのよさです。
 
郷澤:日本社会では見えない壁を作って、プライベートなことはなかなか話さない人が多いですね。
 
ソニア:そうですね。日本の住宅街では外で話し声が全く聞こえず、あまりに静かすぎて近所に誰も住んでいないみたいに感じます。自分からお隣さんと話そうとしなければ、孤独な暮らしが待っていると思うんです。
 
郷澤:僕もメキシコに住んでいたときは隣近所のドン・マルティン(雑貨屋主人)やナチョ(美容師)、ドン・カルニータス(肉屋)たちと毎日のように楽しくおしゃべりしていました。みんな家族の一員のように接してくれましたよ。
 
ソニア:毎日顔を合わせれば誰でもアミーゴ、家族になってしまうのがメキシコ人のいいところですね。
 
■八王子に暮らす魅力
郷澤:外国語学部のキャンパスは八王子にありますが、八王子に住んでみて、ここの魅力は何でしょう?
 
ソニア:街が静かで落ち着いていて、それでいてショッピングモール、お店やレストランがたくさんあり日常生活に不自由しない。映画館や都心にも簡単にアクセスできるところです。
 
郷澤:空も広いし緑が多い。僕が大好きなカワセミやメジロにも簡単に会える。
 
ソニア:イノシシやクマも!
 
郷澤:そうそう、僕はキャンパスでクマの唸り声を聞きました。
 
ソニア:犬じゃないの?(笑) メキシコのキャンパスでは犬以外動物に会うことはないわ。
 
■スペイン語を学びたい学生へのメッセージ
郷澤:最後にスペイン語に興味がある学生たちにメッセージをどうぞ。
 
ソニア:日本語とスペイン語はまったく異なる言語で、それぞれ難しいところがあります。でも、コツコツと学んで練習し続ければ、かならずスペイン語のレベルは上がっていきます。そして、スペイン語を学ぶことで新たな可能性の世界が開けます。多くのスペイン語を使う国々に加えて、英語圏にもヒスパニックのようなスペイン語コミュニティが存在します。ラテンアメリカでは、言葉は同じでもそれぞれ独自の文化があります。スペイン語ができれば、より一層各国の文化を満喫できることと思います。
私は日本に来て、自分が暮らす国の言語を学ぶことの重要性を知りました。その国の言葉を理解することで、人々や文化、習慣についての理解が深まり、もっと生活を豊かに楽しむことができるのです。私は日本語を一生懸命勉強したおかげで自分の「コンフォートゾーン」から抜け出し、テレビや音楽、映画を日本語で鑑賞し、本屋で料理本などを読んで新しい世界に飛び込む喜びを覚えました。皆さんも英語だけでは味わえない感覚を楽しみましょう。
 
郷澤:ソニアさん、ありがとうございました。