外国語学部NEWS
【中国語学科】就職力UPについて阿部沙織准教授からのメッセージ
2023.06.01(木)
中国語学科
◆「キャリア」とは就職
◆「キャリア」とは
就職の話になると、必ず「キャリア」という言葉を聞きませんか?何だか仰々しく、同時にキラキラとしたイメージのある言葉ですが、もともとはラテン語で「わだち=車輪の通った跡」という意味だそうです。ですので、大学生のみなさんもすでに「人生のキャリア」を積み上げているのです。大学卒業後は「仕事のキャリア」がそこに加わるわけですが、人生の中でどんなふうに「働くこと」と向き合い、続けていくのか、働くことで人生はどう変わっていくのか、イメージするのが就職活動の第一歩かもしれません。20年以上前私が大学生だったころは「キャリア教育」のような概念はほとんど無く、何もわからぬまま就活と社会の荒波に放り出されていました。現在では大学が提供する就職活動関連サービスはかなり充実していますので、是非存分に活用して、よりよい未来を模索してほしいと思います。
◆私のキャリア年表
さて、いま44歳の私のキャリア年表を以下に示します。少し変わっているかも知れません。1997年 大学入学
1998年 日本文学科に進学
1999年 中国・南開大学へ留学
2001年 現地で国際結婚・妊娠。3月に留学を終え帰国。出産後9月に大学3年に復学
2002年 中国語が使える仕事に的を絞った就職活動・公務員試験が全滅
2003年 大学卒業、大学院に進学し中国文学を専攻
2008年 中国・北京大学へ留学
2010年 北京で現地企業に就職。離婚、二児の扶養者に。
2013年 日本に帰国、大学院修了、フリーランスで翻訳・通訳業に従事
2014年 企業・大学の中国語教育に従事を始め、現在に至る
◆キャリアは紆余曲折を経るもの
このような個人的経歴から語り起こしたのは、無計画に突き進むと随分回り道をすることになる、という教訓を伝えるためだけではありません。私の年表でも特に明らかなように、「キャリア」は直線状に進むわけではなくライフイベントによって迂回を経ることがあり、それを念頭に人生設計を立てる必要があることを知ってほしいからです。
また仮にライフイベントの影響を受けなかったとしても、今では生涯ひとつの職場で働くことはほとんど無く、みなさんも転職を経てキャリアを築いていくことになるかと思います。
それでは以下に「語学」をキャリアの核にして、中断や変更を経ながら働いて来た私の事例をご紹介いたします。
◆語学は一生食べて行ける技能。最大の武器に!
私が紆余曲折を経ながらも好きなことを続けて食べて来られたのは、周りの人や運に恵まれたお陰と感じています。とは言えやはりそこにも少しは成功の秘訣があったように思います。それは「好きにこだわり続けた」ことと「語学という技能の確立に注力した」ことだと自分なりに考えています。
この二点は重なるところもあるのですが、「早期に自分の専門を見つけ、なおかつ継続する」ことが、キャリアを形成する上で大事なのだと思います。
いみじくもスティーヴ・ジョブズが「自分は人生の早い時期に好きなことを見つけることができて幸運だった」(原文“I was lucky I found what I love to do early in my life.”)ということを言っています。
(ちなみに私の大学・留学時代の友人において、新卒で入った会社でずっと仕事を続けている数少ない人は超一流企業に就職した人、または自分の好きなことを仕事にした人です)その点で私が人生で唯一後悔しているのは大学での専門を中国語関係にしなかったことです。
しかし、みなさんはおそらくこういうことは何度も聞いていて、「そのやりたいことがわからないんだ」と感じている方も多いと思います。
かく言う私も実は三十代になっても「自分はまだ本当にやりたいことに出会えていないのでは」というジレンマがありました。ひとり親となり自分探しどころでは無くなったのですが、それでも「中国語を使う」ことだけを最低条件にして、食べていくためには何でもやるというスタンスで仕事をしているうちに、「中国語まわり」での経験と人脈、職歴が積みあがっていました。結局は十代から一番打ち込んでいた「中国語」が私のキャリアの核となり、私を助けてくれたのです。ですので、「やりたいことがわからない」場合はとりあえず語学力UPに励み、それを使える職業に従事することも外国語学部のみなさんの選択肢ではないかと思います。(私の考えではほかの言語に浮気せず一途に一言語に没頭するのがお勧めです)
◆外国語学部在学中は語学を磨き、資格を取る!
「語学」は汎用性が高い技能です。外国語学部のみなさんは、入学時に専門の言語を選んでいる時点で就活に半分勝った、くらいに思って語学習得に励んでください。語学習得に費やした努力は裏切りません。将来的に、語学にプラスαの個性や専門性を追加していくことで自分の「強み」が築いていけると思います。私はプラスαが結局は「教育」であるとか「文学研究」というものに今はなっているわけですが、みなさんであれば、就職活動時には自己分析を通じて自分の興味・適性と合う「製造」「流通」「観光」「サービス」等の業種なり、「営業」「接客」「通訳・翻訳」という職種なりに語学力をうまく絡めて行けば、強みを発揮できると思います。
語学の能力を証し立てるには、「資格」を取るしかありません。3年のうちに言語は検定の上位級(中国語であればHSK6級、中検準1級くらい)が取れるまでに磨いておきましょう。上位級に手が届かなそうな場合は、どんな級でも良いからトライしておきましょう。
企業で中国語講師を務めたこともありますが、物流系のプライム上場企業のその会社ではすべての新入社員に中検準4級の取得を義務付けていました。検定は上位級じゃないと取る意味が無い…と言われることはありますが、下の級であっても無いよりは絶対ある方が良いし実際企業もそう考えています。また、語学以外にも大学で取れる資格は(もちろん興味と適性に応じてという前提ですが)できうる限り取得するべきです。例えば教員免許状は取得にそれなりの労力が必要ですが、それゆえに日本で公教育に携わるための重みのある資格です。私は高校で教える際に役立っただけでなく、住宅ローン申請時にプラスポイントになると銀行で言われ、こんなところで役に立つとは、と驚いた経験があります。資格が思わぬところで自分を助けてくれることもあります。
◆アフターコロナのいまこそ、留学へ!
そして語学力を伸ばすのに一番良い方法である留学にもぜひともチャレンジしてほしいです。私の行った中国について言えば、大学を通じた留学以外にも(コロナ禍以来2023年現在も中国方面には入国しにくい状況があり、全国的に中国への交換留学が以前のように行えない状況になっています)、中国政府奨学金を利用する手段もあります。この奨学金は手厚くまた取得しやすく渡航費用以外の費用はカバーされます。私もこれらの制度に助けられました。学部の留学時代には日本全国の大学から来た友人ができましたが、何人かは日本企業に就職後、「駐在員」として中国・香港に派遣されています。やはり、学生時代に留学を経験していることで、実際にその地で生活することに適性があると判断されたのだと思います。留学経験は就職やその後のキャリアにも有利に働きます。◆二度と無い人生の自由時間=大学時代を大切に!
留学ができるのも自由な時間の取れる大学時代の特権です。大学時代の学びの時間をぜひ尊いものとして大事にしてください。自分の選択とは言え、私は22歳にして子を持ち、大学時代の自分だけに属する時間がいかに貴重なものだったかを身に染みて知りました。学ぶことは人生最大の贅沢であり、自分への投資です。しかも20歳前後の豊かな感受性は残念ながら年を経るにつれ失われていきます。瑞々しい感性で世界に向き合い、学び、感じ、心に起こる感動、衝撃、疑問、それを大事に胸に収めておいてください。それらはその後の人生を生きる原動力になります。
◆ジェンダー平等を目指して…女子に伝えたいメッセージ
最後に、年表を見てのとおり私のキャリアの過程には一般的に「挫折・失敗」とみられるような出来事も少なからずありました。でもそれだって乗り越えられる、リカバリーできるものなのだと知ってほしいという思いもあり少し赤裸々に書いてしましました。特に女性として、私は妊娠・出産・育児というライフイベントに人生の喜びを得ると同時に、自己実現を阻害するものとして苦しみも感じながら生きてきました。ひとり親になったために仕事を続けざるを得なかったことが私の場合は逆にキャリア形成に役立ちましたが、「就職氷河期」世代で就職に苦労した同世代の女性の同級生は、ライフイベントをきっかけに仕事を辞し、育児等が落ち着いてからパートタイム労働者として社会復帰し、フルタイム労働者に戻れないパターンが非常に多いです。ひとりで生きるにしてもパートナーと生きるにしても、フルタイムで働き十分な収入を得ることがより人生の選択肢を増やすことに間違いはありません。女性はライフイベントのたび「ステージを降りる」「階段を降りる」選択肢を示されることが男性より多いかと思います。決して降りないでください。「語学力」を一生の武器として自分の専門分野で粘り強く働いて行きましょう!みなさんの語学磨き、専門分野の発見と探究を全力でお手伝いしたいと思っています。加油!