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留学体験談「留学体験 今昔」

昔の留学⑨ What you are speaking now is English!(あなたが今話しているのは英語じゃないの)

大越貴子准教授(日本語)
派遣先:マレーシア、クアラルンプール
派遣期間:2007年3月~2010年3月(3年間)

大越先生

もう14年ほど前の話です。JADプログラム(日本の工学系大学留学の為の予備教育プログラム)でマレーシアのクアラルンプールに派遣されました。当初1年くらいの予定でしたが、赴任後のマレーシア生活は予想以上に充実した日々で、結局3年間の派遣滞在となりました。
人生も中盤を大きく超えてからの始めての異国での一人暮らしで、留学経験もなく、英語も下手な自分には驚きの連続でした。広すぎるコンドミニアム、熱帯植物園のような庭園、新鮮で豊富な南国フルーツ、他民族国家だけに多様な食文化。クアラルンプールは海外生活に不慣れな人にとっても住みやすい魅力的な街でした。
ある日、体調が悪かったので病院に行きました。日本語通訳を呼んでほしいと受付の看護師に頼んだのですが、「あなたが今話しているは英語じゃないの、どうして日本人は英語を話せるくせに通訳を呼びたがるのかしら」と言って取り合ってくれません。やがて順番が来たので、仕方なくスマホ辞書とジェスチャーの助けを借りて、必死に医師に説明しました。件の看護師はその傍らで「ほら、できるじゃない!」という表情でこちらを見ていました。日本人はなんでも正確に話そうと思いすぎて、話せなくなっているのかもしれないと思いました。
学生たちは、マレーシア全土から選ばれた優秀なマレー系の人ばかりでした。私はイスラム文化を身近に経験したことがなかったので、1日に5回祈りを捧げる若者たちの姿はとても新鮮でした。しかし、最も感心させられたのは、彼らの助け合いの精神です。富める者が貧しい者に施しをするという風習は聞いていましたが、学力の高い者は、そうではない者を助けることが義務なのだそうです。試験で悪い点の学生がいると、クラスリーダーがそれは誰か教えてくれと迫ります。日本人教員は個人情報なので絶対に明かせないと考えるのですが、彼の理由はこうです。誰ができなかったのかがわかれば、皆でその学生ができるようになるまで、勉強を教えて助けることができる。肝心のご本人にも確認したところ、恥ずかしい気持ちはあるが、それよりもできる学生に習って、早くみんなのためにできるようになりたいと答えました。文化の違いに大いに驚かされました。
彼らももう、日本の大学や大学院を出て、海外や祖国で活躍して、親になったりしています。いつも「先生、先生」と慕ってくれたかわいい姿を懐かしく思い出しながら、国内にいたらわからない様々な価値観を教えてくれた人々に、感謝の気持ちでいっぱいになります。

民族衣装を着た男子学生と

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浴衣を着た女子学生と

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